>ドイツビスマルクの時代には、年金制度の実施とあわせて労働者の定年制度も同時に制定されていました。当時の社会主義運動弾圧を背景に考えると、労働者は働けるだけ働いたら後は死ぬまで静かにしていなさい、という金による懐柔であり、立場を変えれば金を餌に奴隷の身に甘んじることを労働者自身が受け容れてきたということです。(98928

世界的に見れば、定年制度の起源は19世紀ドイツビスマルク時代にあるようだが、日本ではそれに先駆け、17~18世紀の江戸時代に定年(退職金)制度の原型と考えられる制度があった。それは、商人の定年「のれんわけ」制度だ。

この定年「のれんわけ」制度は、もともとは奉公人の年季明け(奉公契約期間の終了)に、奉公人の独立手助けに「のれん」を現物支給したのが始まりで、やがて「のれん代」という独立援助資金に変わり、さらには長年の奉公への報奨や慰労のお金へと変わっていったようだ。

この制度が優れていた点は、概ね以下の3点にあると考えられる。
1.奉公人が奉公を終了しても職を失わない。
  (根無し草にならない)
2.のれんわけされた分家の評判は、直接主家への評判に繋がる。
  売り上げの一部は主家に上納される。
  (地域や時代によって差がある)
  のれんわけすることで、主家・分家がともに栄えていく。
3.優れた技術継承システム=供給者育成システムとなっている。
  奉公人は「独立」を目指して頑張る。
  つまり「のれんわけ」は活力源でもある。

また、この定年「のれんわけ」制度は、江戸幕府も支援していた。
現代風に言えば、政府・企業・個人が一丸となって支えあい、技術を継承し、活力を生み出していたと言える。
ビスマルクに端を発する”奴隷的”定年制度とは全く様相が違っている。(奴隷と供給者では、どちらが活力出るか、言うまでもない)

日本の定年制度は、この後明治に入ってから官主導で、”ビスマルク型”定年制度へと移行していく。明治20 年代初め(1880 年代後半)に官吏や官営工場労働者等に導入された後、徐々に民間企業に普及。現在では、従業員30 人以上の企業の9 割以上で定年制が採用されている。

ところが、江戸時代の定年「のれんわけ」制度とは違い、現代の定年制度は様々な歪・問題を生みだしている。

>つまり、65歳で引退したとしても、あと15年以上は、体も頭も働かせることができる。また、東京都産業労働局が50代にアンケートを行ったところ、定年後も働き続けたいという人が80%以上を占めたそうだ。・・・・今や、若者だけでなく全世代とも、趣味や遊びよりも、やりがいや社会参加(≒仕事)を求めている。それが主流ではないかと思う。しかし現状、高齢者の社会的役割がなかなか見つからないというのも事実。(99874

岩井さんの投稿にもあるように、ビスマルクに端を発する現代の定年制度は全く人々の活力に繋がっていない。むしろ、技術継承問題、労働力不足と言った産業問題、社会的役割喪失からの活力衰弱、そして(退職金による)経済的負担増、そして年金負担増=財政問題と社会問題を生み出すばかり。このような問題だらけの制度を引きずり続ける意味は全くない。

最近は、再雇用制度・雇用延長制度なども導入され始めているが、企業における賃金は年功序列である為、再雇用・雇用延長は企業にとって負担になる→年金の全面的減額又は賃金の大幅カットと金の損得勘定に始終しており、労働活力と言う視点に立った制度とはとても言えない。(賃金カット=評価ダウンの中で労働活力が上昇するだろうか?)所詮、既存の制度の枠の中で目先的な対策を講じているに過ぎない。

このような問題だらけの定年制度に変わり、江戸時代の定年「のれんわけ」制度を、導入してみるのはどうだろうか。
具体的には、定年年齢が来たら「退職金」を支払うのではなく、のれんわけの「独立支援金」を援助する。
定年した労働者は、その支援金で子会社を起こす。
もちろん一人ではなく、同期退職者と一緒に起業してもいいし、先輩退職者が既に起こした子会社に入る形をとってもいい。現状一人当たりに数千万の退職金を支払っているのだから、全く難しい話ではないだろう。(今や資本金1円でも企業できる)
子会社の業務内容としては、若手社員の研修、経営指南、技術指導など、"親”会社のサポートでもいいし、これまで習得した技術を生かして、親会社からの外注先となってもいい。また、全く違う業務、子育て支援や教育などの活力再生業務、更には認識形成業務を営むのもあり得るだろう。
いずれにしても、”親”会社が支援金を注入する。そして”子”は売り上げに応じて”親”に上納する。

このようにして、「定年」=「(供給者としての)独立」と言う構図ができれば、高齢者の社会的役割の喪失と活力衰弱の問題を克服していけるし、同時に技術継承・労働力不足の産業問題も解決する。
退職金と違い、支援金は上納と言う形でペイバックするので、経済的負担も小さくなるし、更には生産基盤を獲得できる為、年金負担も減額していくことが可能になる。

本源集団たる共同体が再生されれば、定年を巡る問題(根無し草・役割喪失)は複合的に解決されるが、過渡期的には、都市労働者の老後、つまり定年制度をどうしていくかと言う問題は極めて臨戦的で重大な問題である。「役割と活力の再生」をキーワードに、既存の制度に縛られることなく、あらゆる可能性を探っていく必要がある。
「供給者育成システム」とも言える、江戸時代の定年「のれんわけ」制度を検討してみることは非常に有効ではないだろうか。





西谷文宏