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勤務時間中は与えられた仕事にひたすら集中する。一見、あたりまえのようだが、それだけでは新しいアイデアや生産性向上につながらないのではないか--。そんな考え方を基に、全社員に就業中の一定時間、自由な活動をしてもらう企業が出てきている。

●バーベキュー、釣り
お台場でバーベキュー、船に乗って魚釣り。これが全て業務の一環になるのは、IT企業のプリンシプル(東京都千代田区)。月1回、社員同士が業務中に好きな活動をする「オフサイト」制度を昨年から導入した。 
 業務と離れた活動を通じて、社員同士のコミュニケーションや新しい発想を促す。4~6人の参加で、金銭的な補助はないが、業務中なので給料は支払われる。

●部門超えて交流
アルバイトを含めて従業員は50人ほどだが、営業、技術、広告と部門が違うと、相手がどんな仕事をしているか分からない。オフサイトは年齢や部門を超えて、誰とでも活動できるので、社内の風通しが良くなり、本音で交流ができる。社長が新入社員たちをつれてケーキを食べに行ったり、アルバイトが外国籍の社員と一緒に遊園地に行き、頑張って英語で会話したりといった思いもかけない組み合わせがでた。

オフサイトを始めるきっかけは、楠山健一郎社長が平日にスキーに行ったことだ。社長だから許されるというのでは不公平なため、制度化した。楠山さんは「土日は家族を優先してほしいので、社員同士で好きな活動をするのは平日にした」と説明する。

新入社員で中国籍のエリス・ジョさんは同期の新入社員とともに、楠山さんとパンケーキを食べながら、会社について自由に話し合った。「大手よりも自由な雰囲気で、自主性をもって働けることが、自分の成長につながる」と魅力を語る。遊んでいるようにみえるが、活動中は仕事の話題が出ることも多く、新たな気づきが生まれ、優秀な人材確保にも役立つと社内の評判は良い。活動内容は社員からの提案で決まり、優秀な企画に表彰も検討している。

●新しい発想生まれ
人材サービスのウェルクス(墨田区)は2015年から、一時的に組織を設置して特定の課題を達成するタスクフォース(TF)制度を取り入れた。社内の課題に取り組み「会社のことを自分ごと」として考える意識を育てている。社員はTFのどれかに入らなければならない。「コスト削減」といった業務に直接結びつくものもあるが、ユニークなのは、家族の満足度を向上させる「パートナー・サティスファクション向上TF」。仕事に励めるのは配偶者や家族の協力が大きいとして、社員の配偶者が育児の息抜きになる日を提供するものだ。

2月は「逆バレンタインイベント」として、男性社員と子供が、妻に渡すチョコレートを作るイベントを行った。イベント自体は休日に開かれるが、企画と準備は業務中に進める。宮本大輔リーダーは「翌日になってメンバーが代わると、新しい発想がでてきて通常業務にも生かせる」と評価する。三谷卓也社長は「上司から言われるのではなく、皆が主体的に問題を早く解決できるようになる」と語る。TFが成功するかは、リーダーのマネジメント能力が大きく、社内人材の見極めにもつながる。

このほか、オリジナルウエディングを軸とする「CRAZY」(墨田区)は毎週水曜、チームに分かれて、自分の現状を話し合うスタイル会議を開く。気分を開放したほうがよいと判断したら、チームで勤務中に湘南の浜辺に行って散策したり自由に行動したりする。社員の健康や人間関係を重視し、その結果、本業にも役に立つという。

ネット通販を手がける本気モード(香川県三豊市)も、社名通り、遊びにも本気で取り組み、仕事中にいかに面白いことを考えられるかを実践している。

●「何のため」理解を
こうした活動で有名なのは、仕事時間の2割を与えられた業務以外の好きなプロジェクトに充てることができるグーグルの20%ルール。正式に制度化されているわけではないが、社員を後押しする考えから全世界で行われている。メールサービスのGメールやグーグルニュース、日本語入力などがそこから生まれた。グーグルは「こうした仕組みからイノベーションが生まれるほか、優秀な人材を維持することに役立つと考えている」と説明する。

アイデム人と仕事研究所の岸川宏所長は「イノベーションを生み出したり、社内の風通しが良くなったりすることが期待できる。全員で参加すれば効果はより大きいだろう。働きやすいと評判になり、採用活動でもプラスになるのでは」と評価する。そのうえで、「全員が何のためにこうした活動をしているか理解し、主体的に動かないようでは、形式化してしまい、難しいだろう」と指摘する。



大森久蔵