「聞く力」の低下要因

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リンクより

話し方を教えるプログラムはたくさんあるが、聞き方を鍛えるプログラムはほとんどない。

「デジタル・ディストラクション」(デジタル機器による注意散漫)の時代、つまりデジタル機器の使用によって気がそらされる傾向が強い現代になる前でさえ、人々は面と向かって会話をして、ちょっとした注意散漫を経験すると、会話内容の約10%しか思い出せなかった。

これを明らかにした1987年の研究は依然として、人々がどれほど会話を思い出せるかを表す主な指標となっている。研究者たちは、マルチタスキング(同時並行の作業)や外からの雑音が増えたことで、人々の聞く力が87年以降さらに低下していると考えている。大半の人々は、平均的な人が話す速さの2倍以上の速さで考えることができる。このため、気もそぞろになるのを許してしまうのだ。

良く聞くことができないと、会議や討議の時間が長くなる。それだけでなく、人間関係を傷つけたり、キャリアを台無しにしたりする場合もある。しかし、聞く力を改善することはできる。まずは「他人の話を聞こうとしない場合のメカニズム」を自覚することだ。

世間の一部には、次に何を言うかばかりを考えている人がいる。コンサルティング会社ポール・チャールズ&アソシエーツのポール・ダナヒュー社長によると、同社長がコーチングしたある営業マンは顧客に対して、その顧客の会社の意思決定者と会わせて欲しいと繰り返しせがんでいた。

同社長によれば、「顧客がイエスと言って了承したのだが、この営業マンは『われわれがその会合予定を立てさえすれば』と重ねて言ったのだ」という。「ここから、営業マンが顧客の話を完全に聞き逃していたことが分かる」とダナヒュー社長は指摘した。

一部には、話し手の意見が自分の意見と同じか否かが分かるまでの間しか話を聞かない人がいる、とバーナード・フェラーリ博士(「パワー・リスニング」の著者でジョンズホプキンス大学キャリー経営大学院の学部長)は指摘する。このほか、話し手を遮って解決法を語り出す人もいる。問題が十分に特定される前であるにもかかわらず、そうすることもしばしばだという。

話を聞く上での大きな障害の1つは、事前に存在している前提や期待、そして意図に基づいて、他人の話にフィルターをかけたり判断したりしがちなことだ――と「意識的な聞き方」に関する本の著者で講演も行っているジュリアン・トレジャー氏は言う。同氏によれば、多くの人々は批判的に話を聞いており、聞く意味がほとんどないと思っている人からの情報は無視してしまう。同氏は英サウンド・エージェンシー社の会長でもある。同社は企業のブランドと音や音楽とを結びつけるのを手助けする会社だ。

2011年に学術誌に掲載された論文によると、聞き手がパワフル(権威的)であればあるほど、その聞き手は他人からの助言を批判したり、無視したりする可能性は高いという。

トレジャー氏によれば、このようなフィルターが存在すると、「コンクリート製の防空壕(ごう)のようなものの中から話を聞いていることになる。しかもその防空壕は、何年も前に自分が建てたもので、しかも自分が建てたことさえ気付いていない」と指摘する。

また、聞くことを練習する機会も減っているのかもしれない。大学生を対象にした2006年の研究によると、対面ないし集団内で他人の話を聞いた時間が占めた比率は約24%と、比較可能な研究が行われた1980年の53%から大きく低下した。米ロックハースト大学のローラ・ジャヌシク准教授(コミュニケーション)が明らかにした。同准教授によれば、聞いたことを覚えておこうとしない人も少なくない。「グーグルで検索すれば、いつでもまた分かる」からだ。「われわれの対人コミュニケーション能力は大きく後退した」と同准教授は指摘する。

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加藤俊治