幸福感や楽しさに関わる概念「フロー」を提唱したミハイ・チクセントミハイは、著書の中で「仕事をとことん、味わい尽くす人物」を紹介している。

以下に、要約をご紹介したい。

****
ジョーは、六十代の初めで、鉄道車両を組み立てる南シカゴの工場の溶接工だ。彼は夏は猛暑、冬は過酷な寒さの、三つの巨大で薄暗い格納庫のような建物で働いていた。また、騒音がひどく、話をするには耳元で怒鳴らなければならないほどだ。

ジョーは五歳のときにアメリカにやってきて、小学校四年で学校をやめた。彼はこの工場で三十年以上も働いていたが、職長になりたいと思ったことはない。

彼はただの溶接工でいたいと主張し、数回の昇進の薦めをすべて丁重に断った。彼はその工場の階層の最低のところにとどまっていたが、誰もがジョーを知っており、工場全体で最も重要な人物だと皆が考えていた。

なぜならば、彼は工場のすべての操業過程を理解しており、必要が生じれば誰とでも仕事を代わることができたからだ。また、彼は工場で故障した機械類はすべて修理できた。

しかし、人々が最も驚いたのは、ジョーがそのすべての仕事ができるだけではなく、その仕事すべてをとても楽しんでいたことだ。

正規の訓練を受けていないのに、なぜこのような複雑なエンジンや装置の扱いを覚えたのか、と聞かれたとき、ジョーはこう答えた。

「たとえば、母親のトースターが壊れたときのように「もし自分があのトースターで、うまく動かなかったら自分のどこが悪いのだろう」と自分に聞くんだよ。」彼は、発見の魅力に取りつかれていた。

だが、ジョーは仕事中毒ではなかった。

ジョーと妻は郊外にある質素なバンガローに住んでいるが、ある時家の両側の空き地を買い、そこに数百の花や低木を植えた石庭を作った。その時ジョーは思った。「ここにスプリンクラーで虹を作りたい。」

ジョーは虹を作るのに十分な細かい霧を作ることができるスプリンクラーヘッドを探したが、満足できるものがなかった。そこで彼は自分で設計し、地下室の旋盤でそれを作った。

しかし、ジョーの庭には一つ欠点があった。日没までに家に帰れないので、せっかくの虹を見ることができない。ジョーは製図板に戻り、解決策を見つけた。

虹を作るのに十分なスペクトルを含んだ照明灯を見つけ、スプリンクラーの周囲に目立たないように設置した。こうしてジョーは真夜中であっても虹を見ることができるようになった。
*****

主人公のジョーは「仕事の楽しみ方」を身につけている。

逆に、他の溶接工らは、自分たちの職場をできるだけ早く放り出すべき重荷と考えており、夕方に仕事が終わるや否や、工場の周りの酒場に散る。プライベートの楽しみ方も、ジョーは創意と工夫にあふれているが、他の溶接工は「テレビ」と答えたそうだ。

ジョーは仕事の楽しさを「与えられている」のではない。彼は自ら挑戦を作り出し、それを解決する能力を少しずつ高めることに、楽しさを見出している。

「自ら楽しみを作り出す」人材が、企業にとって最も望ましい人材であるのは言うまでもない。

彼らは、あらゆる場所で、仕事の楽しみ方を発見し、自らの能力を高め、困難に打ち勝つだろう。結局のところ、「仕事の楽しみ」は主観に左右される。

会社は「面白い仕事」を用意できない。そこにはただ「仕事を楽しめる人」がいるだけである。

引用:リンク



中 竜馬