東京千代田区の神保町にある「未来食堂」はカウンター12席だけの小さな定食屋です。店主以外の人件費はゼロで、ひと月の売上高が110万円を超えることがあるなど、十分な黒字経営を続けています。

なぜ、そんなことが可能なのでしょうか?

『1日1メニューの定食屋「未来食堂」 チェーン店からの学びとは?(msg:リンク)』より引用します。

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■偏食から生まれたおかずオーダーメイド「あつらえ」
小林さんは、東京工業大学の数学科卒。その後日本IBM、クックパッドでエンジニアとして合計6年勤務した後、1年半の間に6件ほどの飲食店でアルバイトを経験し、この未来食堂をオープンした。

「自分はいつか、お店をやるんだろうなという漠然とした思いはありました。学生の頃からバーや喫茶店でアルバイトをしたり、大学の頃は学園祭で一人でお店を出していました。これが好評で、大学4年生の時には4つの大学で出店しました」

しかし、すぐに飲食業界へ入ったわけではない。大学時代にアルバイトをしていたバーのマスターに「外の世界を見てからのほうがいいんじゃないか」とアドバイスをされ、就職を決める。


そして、最終的に定食屋という形態での独立を志す。これは自身の偏食の経験がそうさせたという。大学1年生の時は、1年間ざるそばとシリアルで過ごし、就職後の新卒研修の2ヶ月間、お昼ご飯は毎日ヨーグルトしか食べていなかったそうだ。

○自分だからこそできる飲食店
「『万人にとって美味しい』ではなく『その人にとって美味しい』を提供できるお店はどうだろうと思いつきました。偏食の自分だからこそ、できる飲食店があるのではないかと。ここが未来食堂の原点になっています」

「あつらえ」は、偏食の人でも気兼ねなく料理を食べてほしいという思いが込められている。いわば、おかずのオーダーメイドシステム。自分の好きな食材を好きな味付けで調理してもらえるというのは、ちょっと特別な気分にもなれるだろう。

飲食業での開業にはお客様に喜んでもらえるなど、魅力がたっぷりです。


■「まかない」「ただめし」は現代の“駆け込み寺”
未来食堂は、基本的に小林さん一人が切り盛りしている。しかし、誰もがお店を手伝える「まかない」というシステムを導入している。

「まかない」は、50分お店を手伝うと1食無料になるというシステムだ。一見、人件費を低く抑えるためのアイデアのようだが、根底の部分の想いは違う。

「まかないは、お金以外の関係性でお客さんと関係を保ち続けるためのシステムでもあります。普通の飲食店であれば、お金を払って料理を食べるという関係になってしまいます。そこに納得がいかなくて。一度来てくれたお客さんには、“お金はいらないからまた来てください”と思っていても、そういうわけにはいきません。そこで、どうすればいいのか考えた結果、お金ではなく時間をいただくという形にしようと、まかないのシステムを思いつきました。お金を払うという形以外で、未来食堂との関係性を望んでいる人に、時間という選択肢を作りたかったんです」

イメージとしては「駆け込み寺」のようなもの。小林さんはそう話す。お金がない、でもご飯が食べたい。そんなときに、いつでも来てもらえるように。そんなお店にするためのシステムでもある。

○想いとビジネスの両立
また、「ただめし」というシステムもある。まかないで得た1食無料の権利を、誰かに譲渡することができるのだ。これにより、未来食堂に来てみたいけれど、お金がなくていけないという人でも、食事をしにくることが可能となる。

これらのシステムは、小林さんのボランティア精神で成立しているように思える。しかし、よく考えてみると、未来食堂としてはまったく損をしていない。

「まかない」はお金の代わりに労働力を払ってもらっているし、「ただめし」は誰かが「まかない」で得た1食無料の権利を譲渡しているだけ。

ビジネスとして成立させながらも、誰かの駆け込み寺として機能させる。小林さんの高いビジネスセンスが伺えるシステムといえる。

~・中略・~

■利益は単なる結果にすぎない
未来食堂では、月曜日の仕込みも無料で見学することができる。どこまでもオープンなお店だ。

「遠方から、店舗づくりの参考にしたいということでやってきてくださる方もいます。こちらからお金を払うわけでもありませんし、いくらでもどうぞというスタンスです。お互いに学び合えることもあるし。ゴミ捨てくらいはやっていただきますが(笑)」

また、事業計画書や月次決算をホームページ上で公開しているのも特徴的。未来食堂そのものをオープンソース化しているのだ。つまり、誰もが未来食堂のシステムを参考にして、店舗運営ができるということになる。

このように、従来の飲食店とは異なるシステムを採用することで、各メディアにも取り上げられ注目され、順調に売上も伸ばしている。しかし、小林さんは楽観視していない。

○軸は「おいしい定食を作り続けること」
「お客様は満足すればまだ来てくださります。利益というのは単なる結果にすぎません。今日の定食、明日の定食をおいしく作り続けた結果です。システムとして目を引くことよりも飲食店の本分を全うする事。そこがぶれることはあり得ません。メディアに取り上げられて売上が伸びたら、いかに取り上げてもらえるかと考えてしまう。それは本質ではなく、興味もありません」

開店半年で、小林さんの予想を上回る反響の未来食堂。売上も順調で、多い時にはランチタイムで5回転するほどだという。

「収益の面ではものすごく伸びています。想像以上の評価をいただけていると思います。それは、珍しいから目立っているというのはもちろんあると思うのですが、何度もお店に足を運んでくれるお客さんも多くいて、とてもうれしいことだと思います」
~・後略・~
 


村田頼哉