mag2ニュースより以下続き引用です
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・一筋の道

同社の前身は昭和24(1949)年に設立された「石井鋼球」で、ボールペンの先端部に入れる鋼球の生産を始めた。昭和26(1951)年にはミニチュア・ベアリング(超小型玉軸受け)の需要が将来伸びる時代が来ることを見越して、研究開発、生産販売を開始した。

自動車、ハードディスク、ディスクプレーヤーなど、回転部を持つ製品は多く、それらにはすべてベアリングが使われる。大手ベアリング会社が大型から小型まで幅広い製品開発をするのに対し、同社は小型に特化することで、研究開発費を押さえつつ、世界最先端の技術を深掘りしてきた。

昭和36(1961)年、日本精工と資本、技術販売の提携を結び、その資本系列には入ったが、現在も創業者の子息が社長を勤め、独自の経営を維持して、子会社というより、パートナーの関係になっている。

高い技術を必要としない製品は海外生産に移したが、極小ベアリングの生産は国内に限定して、社員500人規模の中企業となっている。同社の成功要因も、鋼球の生産から始め、それを応用して市場の求める極小ベアリング一筋に職人を育て、技術を深掘りしてきたことだろう。

・スクリューで国内で7割、世界で3割弱のシェア

船舶用プロペラ、すなわちスクリューの製作で、国内で7割、世界で3割弱のシェアを持つのが、従業員約400人のナカシマプロペラである。

ベアリングと同様、高性能のスクリューは泡や波を少なくすることで、エネルギー効率を良くする。ナカシマのスクリューは発展途上国の製品より割高だが、節約できるエネルギー代で、1、2年の航海で元が取れてしまう。また音や振動が少ないので、1ヶ月も船上で暮らす船員にとってもストレスが少ない。

こうした高性能のスクリューを作るには、10メートル近くある大きなプロペラの翼を、100分の1ミリ単位で研削していく技術が必要だ。わずか数ミリの誤差でも、泡が発生したり、振動が大きくなったりする。

精度上、最も大事な研削作業は、この道数十年の熟練工が行う。手の感触を頼りに、100分の1ミリレベルの正確さで削っていく作業で、コンピュータ制御の機械でもできない。だから外国企業も真似できない。

またスクリューは船の設計に合わせて、千差万別の設計と製作が必要だ。中島社長は「100万通りの要求に100万通りのプロペラでお応えします」と語る。どんな顧客のどんな要求にも応じるという徹底した顧客第一主義を貫いている。

「まだまだ中国や韓国には負けない」と中島基善社長は言うが、どんなスクリューも設計・製作する専門技術と熟練技能には、何年経っても追いつけないだろう。

・「プロペラに生きる」という一途な姿勢

ナカシマプロペラの前身は、中島社長の祖父・中島善一が岡山で大正15(1926)年に設立した「中島鋳造所」である。善一は、当時まだ帆船が多かった漁船がエンジン付きの船に替わる、と予想して安価な漁船用プロペラの製造・販売に乗り出した。妻の松子は乳飲み子を背負って瀬戸内海の漁師町でプロペラを売り歩いたという。

戦時中は軍の要請で上陸用舟艇のプロペラを開発し、その製造を一手に引き受けたが、終戦間際の大空襲で工場は全焼し、敗戦によって、軍からの需要はゼロとなった。

しかし、プロペラ・メーカーとしての再起を決意し、旧海軍のプロペラ設計者を雇い入れて技術の向上を図った。漁船用以外の大型プロペラにも進出し、専門メーカーとしての地位を確立していく。

高度成長時代には日本の造船業界が世界トップを占め、ナカシマも国内第2位まで登りつめたが、どうしても抜けなかったのが神戸製鋼所のプロペラ部門だった。

しかし、70年代以降、日本の造船業界は韓国の追い上げで激しい不況に追い込まれ、神戸製鋼所はプロペラ事業から撤退する。他にいくつも事業部門を持っている大企業だからこそできる決断だが、プロペラ一筋のナカシマには他に道はない。中島社長はこう語る。


私の会社はプロペラの専門会社で、どんな不況でも撤退することはできない。ここで生きるしか、ここで頑張るしかなかった。そんな「プロペラに生きる」という一途な姿勢が、世界トップシェアを取れた最大の理由でしょう。
 (『世界を制した中小企業』黒崎誠 著/講談社)

その一途の姿勢で、コンピュータ制御の大型翼面加工機などの先端機器を取り入れ、先端技術と熟練技能の組合せで、大型プロペラの精密加工に挑戦していった。それが今日の世界トップシェアの原動力となったのである。

・「小さな世界一企業」の共通点

反射鏡、極小ベアリング、大型スクリューの3つの分野で、小さな世界一企業を紹介した。グローバル化の時代には、このような他社の真似のできない技術を持つ中小企業が、世界の大企業に部品や材料を売り込めるのである。

この3つの企業に共通するのは、以下の点である。
1.一つの事業分野に一途に徹する
2.その分野で顧客のどんな要求にも応えようと挑戦する
3.そのために長期的に技術を開発し、技能を深める

こうした姿勢をとるには、いろいろな事業分野に取り組む大企業よりも、一つの分野に集中する中小企業の方が向いている。また、長期的に技術開発や技能の深掘りに取り組む事は、終身雇用制度が根強く残っている日本企業ならではの得意技だ。

弊誌558号「永続企業の技術革新」では、我が国には創業100年を超える「長寿企業」が10万社以上ある事を紹介した。世代から世代へと一つの事業を継承していく一途さは我が国の国民性であり、それが「長寿企業」にも「小さな世界一企業」にも現れている。

こうした「小さな世界一企業」が、我が国にはたくさんある。参考文献の『世界を制した中小企業』には、船舶用冷凍庫で世界シェア8割の前川製作所、高級猟銃での世界的メーカー「ミロク」、サッカーのワールドカップなどで審判が使う笛を一手に引き受けている従業員わずか5人の零細企業「野田鶴声(かくせい)社」など、元気な世界一企業が次々と登場する。

こういう「小さな世界一企業」が多数あることは、我が国の誇りであり、また強みである。中小企業は日本の雇用の88%を占める。全国津々浦々の中小企業が、それぞれの事業分野で「小さな世界一企業」を目指すことが、精神的にも物質的にも豊かな国作りにつながっていくだろう。
引用終わり



志水満