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前略)

松下:では口火を切らしていただきます。僕は2018年、ドイツのベルリンに1年間滞在をしたんですけど、そこですごく感じたことは、顧客も社員ということ。目の前の顧客はどこかの社員であり、自分は社員だけど、どこかの顧客だという。

だからクリスマスや年末に店が閉まっていても、「しょうがないか、自分もそうだもんな」みたいな。その感覚ってけっこう大事なんじゃないかなという気がしていて。だからあまりにも「顧客を目の前にして」と考えすぎない。

一言で言うと「お互いさま」ということです、人生100年時代で、ずっとみんなが働き続ける想定をしていく時代。副業も広がっていく時代であれば、やっぱりお互いに働き方に関しては「お互いさま」の関係を築いたり寛容になるということが、ワークスタイリングで重要なポイントになってくると思っています。

■顧客とサービス提供者の境界線が溶けてきている
田中聡氏(以下、田中):「顧客」という概念が、もっというと、「顧客」と「サービスを提供する側」の境界線がどんどん溶けてきているなと感じるんですよね。以前のように、顧客が答えを知っているとか、明確な問いを持ってオーダーをしているケースって、ほとんどなくなってきているような気がしていて。

成し遂げたい大きなものはあるんだけど、それがまだふわっとしいてて言語化されてない。だから一緒に考えてくれませんかと。一緒にそのお客さんの持っている夢とか目的を達成していくために、パートナーになってやってくれませんかという関係性に、最近のサービスって近づいてきている気がするんですよね。

要するに、「顧客に何を提供するのか」というよりは、「顧客と一緒に作っていく、関わっていく」みたいなものが、チームワークという視点からみると大事になってくるのかなって思ったりしますけどもね。

司会者:上田先生はいかがですか。

上田:『プレイフル・シンキング』の本の中にも書いたんですけれども、「バイピープルデザイン」。つまりすべて、顧客も一緒になって考えるという。

例えば、僕は今建築プロジェクトのためのワークショップをさせていただいているんですけども、このワークショップは、顧客の方、つまり施主ですね。施主と建築家が一丸となってどうやって新しいものを作っていこうかと考えるのです。

今までは、例えば施主の方から設計与件が出ていて、この与件を満たすために、「こんな感じでどうですか」って建築家が模型を見せながら提案をして、施主はそれを「じゃあここはこういうふうに変えましょう」と作り直していく感じだったんですけど。

今、その与件といいますか、実は施主自身がなにを作りたいかが、はっきりわからないということが多い。だからそれを一緒になってジェネレイトしていくというワークショップをやっているんです。
■DXも、顧客とサービス提供者の「共同作業」に
上田:そういう、みんなで同じ未来を共同注視して建築を作っていくスタイルが「当事者デザイン」って呼んでいます。建築家は単にファシリテーションをして、顧客からいろんな情報を引き出そうとするんじゃなくて、いろいろな立場の人が協同で、未来を作っていこうという場をジェネレイトするのです。

目的を生成しながら、それに向かってみんなでわいわいがやがや言いながら作っていこうという。特にそういうingの場にはプレイフルなスピリットがないと、なかなかうまくいかないなぁと感じています。

ですから先ほどの顧客という存在をどう捉えるかというご質問に関しましては、やっぱり当事者全員が仲間になって、ゴールを共に生成しながらものすごくおもしろいことにチャレンジしていくという。そういう場づくりが、これからの大きな課題になるのかなと思います。

そのためのヒントとして、今日3人が生成したコンセプトを重ね合わせることによって、新たなヴィジョンが見えたような気がしています。どうもありがとうございました。

司会者1:ありがとうございます。従業員と顧客という存在も重ね合わせていって、そこにどんなものが、どんな未来があるといいのか。そこに向かって、みんなで共同作業していく。そういうイメージなのかなと聞いていました。

田中:最近、経営だとデジタルトランスフォーメーション、DXみたいなキーワードってすごく出てきますよね。「なんかDXしたいんだ」みたいな。だけどそれは単なる手段です。それを通じて何を会社として成していきたいんだっけっていう顧客側の意思というかスタンスが求められてきているのかなと思うんですよね。


後略)




吉 四六